第359章 落語
私には落語家を目指す彼氏がいる。
でも、今は師匠の元で修行中だから遠距離恋愛、噺家になるまで帰って来ないって…。
「こいつぁなんだい?」
大晦日、久しぶりに彼氏から電話が着た。
師匠から携帯の使用は制限されていて、年末年始と夏休みくらいしか使えないらしい。
「あっ、クリスマスプレゼントね
スヌードって言うの、暖かいわよ」
「…素ヌード?
なんだい、それは?
素のヌードだから、素っ裸って事かい?」
「…まだ、それやってるの?」
彼は師匠から修行として、日常会話も落語の様に話せと言われているそうだ。
「スヌードって言うのは首に着ける防寒着…
最近流行ってるのよ」
「首の防寒着と言やぁマフラーだろ
何が違うんだい?」
「マフラーは真っすぐでしょ
スヌードは始めから輪っかになってるから頭を通すだけで良いのよ」
「そいつはおもしれぃ
ちょっと被ってみるな」
この話し方は師匠独自の修行らしいけど、相手するのが疲れるわ。
「ほぉ~確かにこりゃーあったけぇやぁ」
「でしょ
そっちだって寒いんだから風邪とか気をつけてね」
「すまねぇなぁ
御礼と言っちゃあなんだが、今日は大晦日…
蕎麦って言やぁ『時蕎麦』よぉ
一席どうでぇい?」
「…落語は『そば』にいる時にして!」
お後がよろしい様で…。