第353章 ユキ待つ月
抜ける様な秋晴れの空。
色付く木々達を横目に俺は北へ向かう。
約束を守る為に…。
「11月って陰暦だと霜月が普通だけど、雪待月とも言うのよ」
カレンダーを見て呟い。
「雪待ちって、東京じゃ考えられないな
雪なんて年に何回も降らないし、降っても1月か2月だ」
俺は首を横に振る。
「そうね、私の田舎みたいな雪国の方で使われたんじゃないかな?」
田舎はたしか岩手だったな。
「じゃ来年は雪待月にしようか…」
「えっ?どういう事?」
俺の言葉に首を傾げる。
「お前の田舎に行こうって言ってんだよ」
ちょっと照れる。
「…本当に?」
「あぁ、約束だ」
彼女の笑顔が眩しかった。
あれから何年経った?
俺は何度、無駄に霜月を過ごした?
俺は雪待月に…、ユキが待っている場所に行かなきゃならないはずなのに…。
約束したんだ…。
end