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千分の一話噺

第350章 やけ酒


「…マスター、もう一杯!」
行き着けの店、マスターとはプライベートでも遊ぶくらい仲が良い。
「おい、飲み過ぎだぞ」
「ほっといてくれっ!」
マスターに飲み過ぎを注意されたが、突っぱねて更に飲んだ。
「何があったか知らないが、それくらいにしとけ…」
「…マスター…俺…」
断片的な記憶はここで完全に途切れた。



「修二!いつまで寝てるの!?早く起きなさい!」
おふくろに叩き起こされた………気がした。



目を覚ますと自分の部屋ではないが、見覚えのあるライトや装飾。
「やっと起きたか…」
マスターがカウンターの中から声を掛けた。
「悪い…、寝ちまったのか…」
店のソファーで横になっていた。
「あっ…てぇ…
飲み過ぎたか…」
「…当たり前だ
あんな無茶な飲み方しやがって…
ったく、今日は休みだってぇのに何でお前の世話しなきゃいけないんだ?」
マスターのぼやきに、申し訳ないと頭を下げるしかなかった。
これだけ世話を掛けてるのにマスターは何も聞いてこない。

「昨日…、田舎のおふくろが亡くなったって連絡があった…」
「だったら何で飲んだくれてる!」
マスターが怒るのは当たり前だ。
「…勘当されてるんだ
帰っても親父が家に入れてくれない
…全部俺が悪いんだけどな」
マスターは珈琲を出してくれた。
「それでやけ酒か?
まあ、俺も親孝行の話しなんて出来ないが、おふくろさんを思ってあれだけ飲んだんだ、少しは供養になったんじゃないか…」
マスターの言葉に目から溢れる物が抑えられなかった。


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