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千分の一話噺

第344章  お守り


「何だ?それは?」
紫音が俺に何かを差し出した。
「お守りですよ、先生
縁結びの…」
「はぁ…」
溜め息が漏れる。


紫音は俺の教え子、と言っても卒業はしている。
が、生れついての天才とは彼女の事だ。
俺が勉強を教える事無く、彼女は俺を遥かに超えていた。
「で、このお守りを俺にか?」
受け取ったお守り。
どうしたものかと思った。
「はい、先生ももうすぐ五十歳になられます
ですから、これで…」
「余計なお世話って言葉を知っているな
これがそうだ」

知識は並外れているが、世間知らずと言うか、何と言うか…。

「先生…、彼女…いるんですか?」
「…いや
だがな、恋愛とはそういう事じゃない
紫音も年頃なんだから、勉強ばかりしてないで恋愛してみろ」
紫音は首を横に振った。
「私は先生がいれば、それで十分です」
「あのなぁ、もうお前に教えられる事なんかないぞ」
「それでも…」
その言葉に胸の奥をキュッと捕まれた気がした。

紫音は真の天才だ。
その気になれば、どんな知識でも吸収する。
恋愛の知識くらい訳はない…。
まさか…な。
倍の年齢だぞ…。

「紫音、お前もお守りを?」
「はい、お揃いです」



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