第338章 名探偵と玩具の指輪
俺が事務所で寛いでいると、佳奈ちゃんとコロが駆け込んできた。
「探偵さん、これ見て!」
佳奈ちゃんが俺に手を見せた。
「ほぉ~、どうしたんだ?その指輪?」
佳奈ちゃんの指には青い石の指輪がはまっている。
俺は玩具の指輪だとばかり思っていた。
「綺麗でしょ♪貰ったのよ」
「貰った?誰から?」
「えへへ、コロと散歩してる途中で道案内したお婆さんから!」
「…ちょっと、見せてくれないか」
俺は佳奈ちゃんから指輪を受け取り、よく調べた。
「…これは!」
青い石は間違いなくサファイアだろう。
リングもプラチナだと思う。
リングの内側に何か彫ってあるが、かすれてよく分からない。
小学生への道案内のお礼としては有り得ない高価な物だ。
「佳奈ちゃん、そのお婆さんはどこへ?
これは返さなきゃ駄目だ」
「え~、でもお婆さんは玩具みたいな指輪だって言ってたよ」
「これは本物だよ
きっと大切な指輪だ」
「…分かった
お婆さんは市役所よ」
俺は佳奈ちゃん(コロは留守番)と一緒に市役所へ急いだ。
市役所に入るとロビーのソファーにそのお婆さんが座っていた。
「お婆さん!」
佳奈ちゃんが駆け寄ったがお婆さんはきょとんとしている。
「お嬢ちゃん、何か用かしら?」
「やっぱりか…」
俺はすぐに所員に痴呆症だと思うと告げた。
しばらくすると家族の人が迎えに来たので、事情を話し指輪を返した。
指輪はお婆さんの結婚指輪だったそうだ。
「お婆さん良かったね」
佳奈ちゃんはずっとお婆さんの傍にいて声を掛けていた。
「佳奈ちゃんのお手柄だな
ご褒美に何が欲しい?」
「…やっぱり指輪!」
俺は苦笑いするしかなかった。
end