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千分の一話噺

第34章 夏の思い出 前編


チリリ~ン♪

どこからか風鈴の音色が聞こえてくる。

チリリ~ン♪

都会の喧騒には似つかわしくない涼しい音色だ。

チリリ~ン♪

その懐かしい音に、俺の心はあの夏の日に飛ばされていた。


あの日も太陽が容赦無く降り注ぎ、蝉はいつにも増して大合唱をしていた。

「篤志!夏休みだからっていつまでも寝てないの!
片付かないから早く食べちゃいなさい!」
母親に急かされて欠伸をしながら朝食を食べる。
朝から蝉の大合唱だが、都会とは違い鳴き声が柔らかい。

チリリ~ン♪
涼しげな風鈴の音色が心地好い。

「おーい、篤志!プール行こうぜ!」
縁側の方から健治の声が聞こえた。
「ほら篤志!健治くんが迎えに来たわよ」
朝食を掻き込むと、自転車で健治とプールへ向かった。

「篤志、プールまで競走だ!」「負けた方がアイスな!」
俺達は舗装もされていない田舎道を自転車を目一杯漕いで競い合った。

「うわぁ!」
プールまで後少し、目の前を走っていた健治が石にタイヤを取られ派手に転んだ。
「健治!大丈夫か?」
俺は急ブレーキをかけて止まった。
「いててっ…」
健治は膝を擦りむいていたが、苦笑いしている。
「ちぇっ俺の負けか…」
「勝負は勝負、後でアイスだからな」

あの頃は、こんな事でも楽しかったのに…。


to be continue
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