第334章 俺とあいつ21・料理
「ねぇねぇ、今度の連休、梨狩りに行こうよ」
「行かない」
またコイツは何か思い付いたな。
「じゃあ、キノコ狩りは?」
「嫌だ」
気楽と言うか、なんと言うか…。
「じゃあじゃあ、葡萄狩り!」
「い、か、な、い」
たまにはビシッと断らないとな。
「え~っ、せっかくの味覚の秋なんだからどこか行こうよ」
「連休は残念ながら仕事だ」
今の仕事は日曜日休みしかないから連休にはならない。
それはコイツも知ってるはずなのに…。
「仕方ないなぁ、君の我が儘に付き合うよ」
「はぁ?何言ってんだ?」
「日曜日、家に来てね!」
コイツは人の話しも聞かず一方的に決めてしまった。
日曜日。
「これって…」
あいつの家に行くと、沢山の料理が並べられていた。
「君の好きなステーキにキノコピラフに野菜たっぷりなクリームシチュー!
デザートは梨とマスカットのタルト!」
「全部お前が作ったのか?」
以前、デザートは作ってもらったが、こんなに料理が上手いとは知らなかった。
「君はボクの実力を知らな過ぎるぞ
本当は採れたての材料を使いたかったけど、これで我慢してね」
「でも、なんで?」
「やっぱり忘れてるんだ
明後日は君の誕生日じゃないか!」
「あっ…」
確かに誕生日だが、もう祝ってもらって喜ぶ歳じゃないし、正直忘れてた。
「君の誕生日を祝ってあげるんだから感謝したまえ」
腰に手を当て、上から目線…、これさえなければといつも思う。
end