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千分の一話噺

第321章 短冊


「せっかくの七夕なのに土砂降りだね」
私は嘆いた。
「今は梅雨時だからね
昔みたいに旧暦だったら空も晴れてただろうけど…」
彼がサラっと答える。



都会に暮らすようになってだいぶ経つけど、どんどん便利になるに連れて星が見えなくなってきた。
「星どころか空がどんどん狭くなる…」
「それだけビルが増えたって事だね
空気も汚れて、晴れても天の川は見えなくなった
…田舎に引っ越そうか?」
彼の提案も悪くないけど、一回便利に慣れちゃうとちょっとねぇ。
「う~ん、私は都会が良いかな」
「そうかぁ…
じゃあ、また一年に一回、七夕に会うことにする?
ここには天の川はないから、どこかの川を挟んで…」
彼は冗談ぽく言う。
「また?
それってもう五千年くらい前の話しよ
この星に来てからずっと一緒だったじゃない
…まさか浮気?」
私はちょっと睨みつけた。
「あははっ!それ受ける!
俺が織姫以外を愛する訳ないだろ?」
彦星はウインクして見せた。
「ねぇ、短冊に何て書いたの?」
「俺か?もちろんずっと二人でいられる様に…
君は?」
「…ひ・み・つ♪」
「ずっこいなぁ」
二人で、土砂降りの雨に揺れている笹飾りの短冊を眺めながら七夕を楽しんだ。


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