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千分の一話噺

第317章 時代錯誤


『大和撫子』

女性らしさを表す言葉自体を「差別だ」というご時世には風情も感じられない。

「バカヤロー!何やってんだ!」
怒声を飛ばしているのは『大和撫子』と書いて『だいわなでしこ』と読む、れっきとしたアラサーの女性だ。
彼女は大手ゼネコンに勤め、建設現場の現場監督をしている。

荒っぽい職人が多い現場仕事では、女性だからとおしとやかにしている場合ではない。
危険な行為には怒声を飛ばすくらいでなければ、一つ間違えば命が亡くなる大事故に繋がるからだ。
ヘルメットはもちろん、真夏でも長袖の上着、足元は安全靴、高所作業なら安全帯等など、細かい規則を挙げたらキリがない。
現場での事故を無くすためには厳しい言葉も飛び交う。

「監督は『大和撫子』じゃなくて『戦艦大和』だよな」

職人の間でのあだ名だ。
もちろん面と向かって言う人はいないが、風の噂で耳には入る。
「…戦艦ねぇ
それで事故がなくなるなら、何て呼ばれても構わないわよ」
彼女は笑い飛ばす。

『大和撫子』…、女性らしさは時代と共に変わっていく。
現代の『大和撫子』とは、どんな女性を指すのだろうか?



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