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千分の一話噺

第315章 こだわりの店


「何かすっきりするやつを一杯くれ…」
俺は馴染みの店のカウンター席に座り注文した。
カウンターの中にいるマスターはチラッと俺の顔を覗き込み、店の奥に引っ込んだ。

「…どうぞ」
しばらくして、俺の目の前に出されたグラスには、鮮やかな赤い液体が注がれていた。
「…これは?」
「ハイビスカスティーです」
「ハイビスカス?…って花の?」
「鑑賞用のハイビスカスではありません
ローゼル種と言って食用に使われるハイビスカスです
あのクレオパトラも飲んでたんですよ」
「へー…」
一口飲むとほど好い甘酸っぱいさが口に広がり、ぼやっとした頭もすっきりする。
「美容や疲労回復の効果や新陳代謝を促すと云われていて二日酔いにも良いらしいです」
どうやらマスターには、ばれている様だ。
「あはは…」
力無く笑うしかない。
「…でも何でこんなのが?
メニューにないじゃん」
「最近、ハーブティーの勉強をしてるんですよ
近々メニューに加えようかと思いまして…」
ここのマスターはこだわりが強く、自分が納得した物しか出さない。

いつだったかカレーをメニューと言って、出来たのは二年後だった事がある。
一週間くらいインドにまで行ったそうだ。

ハーブティーもメニューになるまでどれだけ掛かるか…。



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