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千分の一話噺

第310章 ロック魂


俺の知り合いには変わり者が多い。

その一人が、金崎六郎。

高校時代から今でも、自分の事を「Rock'n'郎・金崎だぜ!ヨロシクベイベェ~♪」と宣う。

ストーンズのミック・ジャガーみたいならまだしも、突き出た腹に薄くなった頭、何よりチビで五十路のしがないサラリーマンのオッサンが言う台詞ではない。
しかし、今でもロックスターになる夢を諦めていないと言うのは大した物だ。
歌は下手だし、ギターも弾けないのに…。

まぁ人畜無害ではあるが、変なこだわりは持っている。
私服は夏でも革ジャン、汗だくになってるのを見ると、こっちまで汗が出る。
酒もタバコもやらないが、飲み物はいつもホットのブラック。

夏だからと間違って麦茶なんか出そうものなら、10分間はシャウトしっぱなしだ。
声が涸れるまでシャウトするってどうよ?と思うが、金崎にしてみれば「これがロックだ!」なのだそうだ。

歌も楽器もダメなロック野郎の特技が…。
「どうだ!ロックだろぅ?」
さくらんぼの茎を口の中で舌を使って結ぶ。
子供の頃から唯一自慢出来る特技だった。
「今時さくらんぼの茎結びなんてする奴いねぇよ」
と言うと金崎は親指を立ててドヤ顔をする。

こいつにとって“ロック”とは何なのか?まったくの謎である。



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