第309章 イベント
「では先生、お願いいたします」
司会の人に紹介されて私は少し緊張気味に壇上へ上がった。
先月、私の所にイベントの依頼があった。
「でも、今時生け花のイベントなんて人が来るんですか?
それに私は有名な流派ではありませんし…」
始めは断ろうと思っていた。
「先生の生け花はネットで話題になってるんですよ」
意外だった。
確かに弟子の一人がインスタに上げてるとは言ってたけど、私は興味なくて気にもしていなかった。
「それに失礼かも知れませんが、イベントはコラボにしようと思ってます」
「コラボですか?何と?」
それは意外なコラボレーションだった。
「天の原
ふりさけみれば
春日なる
みかさの山に
出でし月かも」
短歌(百人一首)の朗読に乗せて花を生けていくというイベントだった。
興味本位だったけど、短歌の調べが意外とよく合う。
私は気持ち良く花が生けられた。
「いゃ~さすが先生!
イベントは大成功ですよ!」
確かに客席は満席だったけど、朗読してた人は有名な声優さんだし、アニメ映画関連のイベントでもあったから成功は私のせいではないのは火を見るより明らかだった。
「でも、楽しかった♪」
自分へのご褒美に頼んだパフェが凄く美味しかった。
end