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千分の一話噺

第308章 変人


そいつは夜になると現れる。

「ねぇ、知ってる?吸血鬼の噂!」
「吸血鬼?俺が聞いたのは狼男だったぞ」
「え~ただの変態じゃないの?」
「いや、宇宙人らしいぜ」

人の噂とは、いい加減なものだ。
この噂の中では『変態』が最も近い。
他は人間ですらないから…。

確かに彼は夜に…、というより夕方くらいから活動を始める。
つねに黒っぽい服を着て、満月になると妙に興奮する変な奴だが、もちろん変態でも変質者でもない。

彼は植物学者、しかも夜に咲く花専門と言うちょっと変わり者だ。
「夜に咲く!これが良いんだ!
普通の花とは真逆なんだよ
夜は授粉に必要な虫も少ないのに何で夜に咲くかねぇ?
もちろんいろいろ進化の過程はあるが、本当の理由は花にしか分からないのさ、ガハハハッ」
豪快に笑いながら持論を話す。
「今か?今は月見草だ!
まぁお前らが知ってる月見草は多分、待宵草だろう
月見草も待宵草の一種だがちょっと違うんだな
日本には江戸時代くらいに観賞用として入ってきて、その後、日本でも自生していたが、生態は弱く今ではほぼ全滅している
ただ手間を掛けてやれば、こうやって咲くけどな」
そう言って見せてくれたのは、真っ白な四枚の花びらを咲かせた月見草。

「富士には月見草がよく似合う」
と言ってはいるが、富士山が見える訳ではない。



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