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千分の一話噺

第303章 殿下


平成から令和へのカウントダウン。

「…3…2…1!」

ドーンと花火も打ち上がり、新元号『令和』が幕を上げた。

…はずだった。

ゴーン…ゴーン…。
「えっ?あれっ?停電?」
華やかな街明かりが消え、賑やかな人波も消えた。
「み、みんなどこ行ったの?」
真っ暗で周りにいた友達もいなかった。
私は辺りをキョロキョロと見回したが人っ子一人いない。
心細くなりその場にしゃがみ込んでしまった。
「そこのお前!こんな夜中に何をしている!」
声と同時に急に光りが当てられた。
「怪しい奴め、連行する」
戸惑う私を屈強な男達に両側を抑えられてしまった。

恐怖で声も出ない。

「待て!か弱い女性に何をしている!」
その声に屈強な男達はひざまづいた。
「殿下!この者、怪しい恰好をしています
敵国の密偵かも知れません」
(…でんか?でんかって電化製品?
違う違う…えっと…殿下って王様とかの親戚だよね…)
その殿下と配下らしき男達の話し合いが終わると、殿下が私の前で片膝ついた。
「すまなかったな
今、我が国は戦争間近いのだ
みんなピリピリしている
許してくれ」
見上げるとサラサラな赤髪と端正な顔立ちで、いかにも王族な恰好をしていた。
(わぁ~素敵♪王子様ってほんとにいるんだ)
私が見取れていると「立てるかい?」と手を取られた。
「あっ、はい!大丈夫です!」
勢いよく立って見上げる…、見上げる?…見上げ…。
(あれ?殿下は?)
目の前に赤髪がなびいている。
(ちっさっ!うそ~こんなにカッコイイのに…)
155㎝の私より5㎝は小さい。
「ん?どうした?」
殿下は背の高さは気にしていないようだ。
「い…いえ…わ、私…鈴音と言います」
「うむ、私はクローヴァルス・フォン・デードリッツ・シュルゲン四世だ」
(長っ!覚えられないよ…)
こうして私は令和と同時に異世界で暮らす事になってしまった。



end
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