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千分の一話噺

第301章 記念日


私達の結婚記念日は『こどもの日』。
平成元年に結婚したから、もう三十一年目…。

私達には子供がいない。
…と言うより、私が若い頃に大病を患い子供が出来ない身体になってしまったからだ。
彼はそれも承知で結婚してくれた。
「なぁ、こどもの日に婚姻届を出さないか?」
「え?でも…」
彼からの提案を私は素直に受け入れられなかった。
「子は鎹(かすがい)って言うだろ
俺達には子供は出来ないけど、だからこそ俺達の結婚記念日に相応しいんじゃないかな」
「…変な理屈」
私は涙を堪える事が出来なかった。


あれから三十一年間、笑って泣いて喧嘩して、そしてまた笑って…。
順風満帆ってわけじゃないけど、二人で手を取り合ってきた。

還暦も過ぎて、時代は平成から令和に変わるけど、私達は今まで通り。
「小太郎、こっちだ」
夫が柴犬の小太郎と遊んでいる。
小太郎は還暦祝いにと夫が連れて来た。
会社の同僚だった友人の家で産まれた子犬を貰ったそうだ。
「やんちゃ坊主が増えたな」
「そう?うちには前から大きな子供がいるわよ」



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