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千分の一話噺

第299章 価値観


日本の国石でもある翡翠、古来より勾玉などに使われてきた。
「奇跡の石」とか「不老長寿の石」とか云われ重宝されてきた。



「これって勾玉?…だよな」
「マガタマ?なんだそれは?」
相棒は首を傾げていた。
「日本の古代のアクセサリーさ
古代の高貴な人が着けてたそうだ」
「へーっ、これってエメラルドか?」
「翡翠(ジェード)だよ
しかし、何でこんな所に…」
俺達がいるのはニューヨーク52番街、アパートの一室、殺人現場だ。
被害者は30代白人女性、独身で一人暮らし、争った形跡はなく金品も残されていた。
怨恨による顔見知りの犯行と思われる。
「ってことは、そのマガタマは犯人のもんじゃないのか?」
「可能性は高いな」
俺達は他に手掛かりはないか捜索を続けた。

「しかしお前、何でマガタマなんて知ってるんだ?」
「学生時代に日本へ留学してたからな」
あの頃は刑事になるとは思ってなかった。
本当は考古学に進むはずだったのだが、あんな事件が起こらなければ…。
「そういやお前、学者になるつもりだったんだろ?」
「うっ…昔の事は忘れた
そんな事よりちゃんと手掛かり探せ!」
結局はこの勾玉以外の物証はなかったが、希少な代物のお陰で犯人はすぐに割り出せた。

日本の歴史を研究している考古学者だった。
動機は価値観の違い。
勾玉は彼女へのプレゼントだったそうだ。
だが彼女は勾玉の価値が分からなかった。
何とも皮肉でやり切れない事件だ。
「あの犯人とお前、気が合いそうだったな」
「残念だが、俺は翡翠(ジェード)よりエメラルドの方が好きなんでね」



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