第292章 名探偵の花見案件
「何やってんだ、俺は…」
芝生にシートを敷き、仰向けに寝転がる。
揺れる桜と木漏れ日が気持ちいい。
俺の隣で佳奈ちゃんとこのコロが欠伸をした。
「名探偵、暇だろ?
花見の場所取りしてきな」
オーナーのおばちゃんに半ば強制的にコロとビニールシートを押し付けられた。
確かに暇と言えば暇なのだが…。
周りを見れば家族連れが数組いるくらい、平日の真昼間にいい歳したおっさんが花見の場所取りとは泣けてくる。
「あぁ、ビールでも買ってくるんだったな」
春の陽気にうたた寝をしていた。
「探偵さん!事件だよ!」
その声で勢いよく起きると、横で佳奈ちゃんがクスクスと笑っていた。
「嘘だよ~
はい、これ…
おばさんがこれで先に花見始めてなさいって」
渡された袋の中にはタッパーとビールやジュースが入っていた。
「佳奈ちゃん、嘘なんか吐いてるとろくな大人になれないぜ
…で、オーナーは?」
「えへへ、ごめんなさい
おばさんはまだお母さんとお弁当作ってるよ」
「そうか、じゃあ二人…、とコロで始めてるか…」
袋から俺はビールを、佳奈ちゃんにはジュースを渡した。
タッパーには卵焼きに茹で卵にタマゴサンド…。
「何で卵ばっかりなんだ?」
「私が好きだから♪」
佳奈ちゃんが満面の笑顔で答えた。
茹で卵をツマミにビールで花見も乙なもんか…。
end