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千分の一話噺

第291章 噂の桜


「なぁ知ってるか?
あの丘にある桜が咲くと毎晩すっげぇ美人が桜の下で踊るんだってよ」
俺はちょっとドヤ顔をした。
「なんだお前、今頃知ったのかよ
この辺で、姥桜の舞って言ったら知らない奴の方が珍しいぞ」
(うっ、そうだったのか…)
噂をちらっと聞いただけだったので、そんな有名だとは知らなかった。
「し、しかし何で姥桜なんて名前なんだ?」
「本人が姥桜って名乗ってるからだよ」
「本人が?」
噂を聞いた時はそれほど興味が湧かなかったが、『姥桜』と名乗る美人にあってみたくなった。

そして春、桜開花となった。
「姥桜が咲いた!」
待ちに待った丘の桜が開花した。

俺はその日の夜、丘の桜に急いだ。
「…早過ぎたか?」
桜は数輪ちらほらと咲いてはいるが、『姥桜』どころか人っ子一人いない。

「はぁ…帰るか…」

俺は肩を落とし桜に背を向けた。
その時だった。
どこからか桜の花びらが舞い落ちてきた。
「お待ちなさい」
振り返るとそこには、艶やかな和服をきた美人が、ライトもないのにスポットライトの下にいるように輝いてみえた。
「…あ、あなたは?」
「姥桜の響子」
「あなたが姥桜…?」
俺はあまりの美しさに見取れてしまった。
「この桜を見にいらしたのね
さぁ存分にご覧あそばせ!」
彼女がそう言うと、扇を片手にくるりと一回りした。

するとさっきまで確かに数輪しか咲いていなかった桜が満開になった。
「…美しい」
満開の桜よりも、彼女の美しさに虜になってしまった。



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