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千分の一話噺

第289章 腕時計


最近は腕時計を付けている人は減った。
携帯電話が時計代わりになるからだ。

だからといって腕時計が無くなるのかと言うとそうでもない。
超が付くくらいの高級腕時計は、時計というよりステイタスシンボルとして、例え安物でも人が付けなくなったから敢えてファッションとして付ける人もいる。




「今時、腕時計とはレトロだな」
「貴様にこの時を刻む為だけに生まれたマシンの良さは分かるまい」
こいつは妙な物にこだわる癖がある。
この前もフィルム式のカメラを使っていた。
「そんな時計のどこが良いんだ?
俺にはよく分からんな」
「これは、今や貴重なクオーツなのだよ
水晶発振器で時を刻む…
これが発売された当時は、その精度の高さに驚いたものだ」
「200年も昔に発売されたのに、さもその場に居たかの様に言うか?」
「これは当時から時を刻んでいるのだ
その場に居たも同然であろう」
こいつと話していると頭が痛くなる。

天才と変人は紙一重と言うが、正にこいつの事だ。
「何でお前みたいな奴が、空間転移装置なんてとんでもない物を作れるんだ?」
「古きを知り、新しきを知る…
空間転移装置は、このクオーツからヒントを得ている
最先端とは過去の知識の積み重ねにしか過ぎないのだよ」
時代を先んじる天才科学者にして、希代のアンティークマニア。
今でも移動するのに自転車を使っている。



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