第288章 歳の差夫婦⑮・インカ帝国
「はい、お土産」
仕事から帰ってきた旦那が鉢植えの花を差し出した。
色鮮やかだけど見たことのない花だった。
「わぁ綺麗な花♪
なんて花なの?」
「インカ帝国の百合」
なんか凄い名前が返ってきた。
「い…インカ?帝国?
あの世界史の?」
「そう、これはアルストロメリアと言って、南アメリカ、インカ帝国があった辺りが原産なんだ」
アル…うっ、覚えられない…。
「あぁ、だからインカ帝国の百合なのね
でも、何でこれを?」
今日は別に誕生日でも記念日でもなかったはず…。
「今日、会社にね、南米から仕事の依頼があって、南米について調べたら見付けたんだ」
「…って事は、今度は南米に転勤なの?」
私はちょっと期待した。
「残念だけど行くのは若手社員で、僕は行かないよ
南米ワインを期待してたんだろうけどね」
旦那はウインクしてみせた。
さすが旦那様、よく分かっていらっしゃる。
ペルーやチリはワインの産地だから、いろんなワインが楽しめると思ったのに…。
「この花でも見ながら、南米ワインでも飲もう」
そう言って鞄からチリワインを取り出した。
もう旦那様ったら…、本当によく分かっていらっしゃる。
end