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千分の一話噺

第285章 芸術の都


フランス、芸術の都パリ、その象徴的な鉄塔『エッフェル塔』。

世界中から観光客が押し寄せる名所だ。
その名所の足元、エッフェル塔とは関係ない人だかりが出来ていた。

その中心には…。

赤いランドセルを背負った巨大な毬藻!!
背負ったと言う表現が正しいのか?、否、そもそも毬藻に背中や肩と呼べる部位があるのか?
いやいや、水中にいる毬藻が平気でここにいられるのは何故だ?って言うか、これ本当に毬藻?

そんな疑問も隣のエッフェル塔すらも吹っ飛ぶくらいの強烈な存在感を毬藻は放っていた。
パリッ子も観光客も遠巻きにカメラやスマホで写真を撮ってはいるが誰も近づこうとはしない。
周囲は騒然となり終いには警察まで出動したが、誰にも被害がなく、前衛的な芸術作品かも知れないと手を出せなかった。
仕方なく毬藻を囲み、どうするか検討を始めた。

その映像はネットで世界中に拡散され、閲覧数は跳ね上がり、メディアは専門家を名乗る怪しい輩を続々と登場させた。
「放射能による変異」だとか「宇宙生物」だとか「あれはうちのランドセル」だとか…。
そんな人間の乱痴気騒ぎも意に介す事なく微動だにしない毬藻。

パリの風にその身を僅かに揺らせるだけだった。



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