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千分の一話噺

第283章 お守り2


アニキをそそのかして来た旅館。

ネットでいろいろ調べてアニキ好みの独身女将さんがいる旅館を選んだ。
思惑通り、美人の女将さんにアニキは一目惚れしたようだ。

そのアニキは元甲子園球児で、その頃はモテてたみたいだけどもう27…。
いくら私が可愛いからと言っても、そろそろ妹離れしてもらわないと困る。

その日の夕食が部屋に用意され、女将さんが料理の説明をしてくれた。
食材のほとんどが地元の産物でどれも美味しそう。
「これは食前酒として、お召し上がり下さい」
御膳に白い飲み物が出された。
「これ、お酒なの?」
「はい、明日は雛祭りでございますので、お兄様には白酒を、妹様は未成年なので甘酒をご用意致しました」
女将さんがアニキのグラスに白酒を注いだ。
「女将さんってどんな男性がタイプなの?」
「お前はっ!」
アニキが怒ったけど、女将さんは微笑んでくれた。

女の私でも惚れそうなくらい綺麗だ。
「あっ、飲む前にこれを…」
そう言って女将さんは桃の花を取り出した。
「その昔、桃の節句では白酒に桃の花びらを浮かべて楽しんだそうです」
そう言いながら、桃の花びらをグラスに浮かべた。
「…綺麗」
白いお酒の上にピンクの花びらが一際映えていた。
「…丸で女将みたいだ」
アニキがポロッと呟いたのを私は聞き逃さなかった。


to be continue…
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