第280章 反撃
「ほらコーヒー…ん?
何だ?それは?」
俺がカップを差し出すと、カエデは何かを手に持っていた。
「へへ…、紙雛よ」
そう言ってカエデは粗末な紙で作られた一対の内裏雛を見せた。
「カミ?ビナ?…だから何だよそれ?」
「私が小さい頃、まだ世界がこんなになる前に本で読んだことがあるんだ
大昔、三月三日はひな祭りと言って、女の子のお祭りだったのよ
ひな人形を並べて愛でるの…
今はひな人形なんてないから、折り紙で作ったんだ」
俺はカエデが女だと言う事を忘れていたようだ。
「それはさぞ華やかだっただろうな
だが今はそんな夢を見ている暇はないぞ」
俺はコーヒーを流し込むと銃の手入れを始めた。
「こんな今だから、夢を見るのよ
はい、弾薬」
カエデはそれでもしっかり準備は怠っていなかった。
「おう、ありがとな
それじゃあ、その夢を見せてやるか」
2157年、世界中で謎の生物が突如現れ人類を襲い始めた。
謎の生物の勢力は、僅か15年で人類の大半を死に追いやった。
しかし、残った人類は必死に抵抗し僅かな望みを見付けた。
それは日本の土着菌が謎の生物には毒となる事だ。
人類の反撃が今始まろうとしていた。
end