第279章 飛翔
かつて東京の空にも雲雀は羽ばたいていた。
「お~い、ヒバリ!
今度の大会は応援に行くからな!」
俺は二階の教室からグラウンドのヒバリに声を掛けた。
ヒバリは笑顔で手を振り返した。
しばらく窓から彼女の躍動する姿を見ていた。
(うん、調子良さそうだ
今度の大会は勝てそうだな)
最近、彼女はスランプと言うか試合で勝てていなかった。
しかし、彼女は高校に入ってから日本記録を次々と更新し、日本代表に選ばれた選手だ。
もちろん勝負は時の運もあるし、世界の強豪が相手となるとなかなか勝てないのは仕方ない。
が、記録が伸びていない事が彼女を悩ませていた。
「う~ん、なんなのかな?
なんか調子が悪いのよね…」
彼女と話しても歯切れが悪い。
「考え過ぎなんじゃねぇの?
最近の練習見てると、あんまり楽しくなさそうだぜ
前は練習でももっと楽しんでたじゃん」
俺みたいな野球部の補欠が、日本代表の彼女に偉そうな事を言えた立場じゃないのは分かっている。
だが、彼女はしばらく考えて、「ありがとう」と晴れやかな笑顔で答えてくれた。
「ヒバリーッ!
羽ばたけーっ!!」
東京オリンピック、女子走り高跳び日本代表は竹中ヒバリに決定した。
東京にヒバリが羽ばたく日は近い。
end