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千分の一話噺

第276章 仕事


東京にも十年に一度くらいは大雪が降る。

その日も前日の夜から降り始めた雪は朝になっても止む気配はなかった。
『都心の積雪はすでに20㎝以上に…』
ニュースでは東京に大雪警報が発令されたと報じた。
コンクリートとアスファルトの街は一夜にして白銀の世界に変わった。

「よぉしっ!
気合い入れて行くぞ!」
先輩はこの状況でも仕事に出ると言い出した。
「え~っ!
この雪ですよ…」
「バカヤロー!
雪が降ろうが槍が降ろうが、殺人鬼を野放しに出来るわけねぇだろ!」
先輩はそれこそ鬼の形相で怒鳴った。

地道な聞き込みは事件解決には重要な仕事だ。
人の記憶は曖昧で、時間が経つと記憶は薄れてしまう。
だから、聞き込みは事件後すぐに始める。
ほんの些細な情報でも、それを繋ぎ合わせる事で解決の糸口になる事は多々ある。
しかし、この大雪で道路は立ち往生した車であふれ、電車は止まり、交通網は麻痺している。

捜査員全員が徒歩で聞き込みに走る。
「どうだ、そっちは?」
「ダメですね…
先輩は?」
「こっちも空振りだ」
深々と降り続く雪の中を一日中歩き回り、身体は冷え切っていた。
「…ラーメン食うぞ!」
「えっ?」
「冷え切った身体じゃ動きも悪いし、腹が減っては何とやらだ」
喜ぼうと思ったが、これはラーメン食べたらまた聞き込みと言う事だ。
「はいはい、食べたらまたがんばります」
「あっ悪りぃ、金無いから払っといてくれ」
「…鬼~っ!」



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