第275章 歳の差夫婦⑭・ワイングラス
「ねぇねぇ、今日はどんなワインが良いかな?」
私がお店で品定めをしていると、旦那の蘊蓄が始まった。
「二月の誕生石はアメジストだよね
アメジストにはワインにまつわる伝説があるんだ…」
ギリシャ神話によると、豊穣とワインの神ディオニューソスが、月の女神アルテミスに仕える乙女アメシストをお供の虎の餌食にしようとけしかけたが、アルテミスはアメシストを水晶へと化身させ、虎から救った。
ディオニューソスは自らの非を恥じ葡萄酒をその石に注ぐと、水晶はたちまち美しい紫色に変わり宝石『アメジスト』が生まれた。
「…この伝説でね、アメジストは悪酔いを防ぐ石として、古代ギリシャではアメジストで作ったワインカップで飲むと酩酊しないと信じられていたんだ」
「へぇ~そのアメジストのワインカップ欲しい♪」
「…アメジストだよ?、あったとしても簡単には買えないさ」
「…そうだよね」
私は神話に因んでギリシャ産のワインを選んだ。
「アメジストは無理だけど、紫色のワイングラスを探そうか?」
「それ良いかも♪
ギリシャ神話の世界に浸れるね」
さすが私の旦那様、よく分かってらっしゃる。
「で、今日の晩御飯は何にする?」
「え~っと…、ピザなんてどう?」
「何でピザなんだ?」
「だってギリシャ料理なんて分からないんだもん」
end