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千分の一話噺

第274章 苦戦中


「くっそーっ!
イライラするっ!」
俺は上手くいかない現状に苛立っていた。
「はぁ…
何やってんだ?俺は…」
気分転換に珈琲を入れて一息ついた。
「時間がねぇ
少しでも進めねぇと…」
また苛つく作業に戻った。

「ここがこうで…、こっちがこうで…
で、これを…こうやって…、あぁやって…」
ネットの動画を参考に四苦八苦しながら手を動かした。


何故、悪戦苦闘しているのか?


それは去年の俺の誕生日の事…。
「はい、プレゼント…」
彼女から紙包みを渡された。
開けてみるとオレンジ色の編み物が。
「ありがとう♪
…マフラー?」
オレンジ色は彼女がいつもラッキーカラーだと言っていた。

よく見ると編み目にムラがある。
「もしかして手編み?」
「何?文句あるの?」
素っ気ない素振りだが、照れ隠しなのがありありと分かる。
「文句なんてある訳無いじゃん」
早速マフラーを首に巻き、彼女を抱きしめた。
「じゃあ、来年は俺が手編みのセーターでもプレゼントしようか?」
もちろん冗談のつもりだった。

が…。

「…約束よ!」
彼女の悪い癖が顔を覗かせた。
「えっ?い、今のは…」
「出来なかったら、どうなるか分かってるわよね!」
「…マジ!?」
悪戯な笑顔が怖い。

翌日から編み物との闘いが始まった。



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