第266章 誕生日
『新年、明けましておめでとうございます
貴方は十年後の誕生日に命尽きます』
差出人の名前がない年賀状が届いた。
「何だ?この冗談は?」
仲間にいろいろ聞いたが、結局誰が出したのか分からないままだった。
すっかり忘れていたが翌年また届いた。
『九年後の誕生日に命尽きます』
(誰かが俺を怨んでいるのか?)
しかし怨まれる覚えはない。
逆恨みと言う事はあるかも知れないが…。
それから毎年この年賀状は届いた。
五年目と八年目に引っ越したが、その引っ越し先にまでちゃんと届く。
住所は家族や仲の良い仲間にしか教えていない。
警察にも「殺害予告じゃないか」と相談したが、さすがに相手にされなかった。
そして、遂に最後の一枚が届く。
『今年の誕生日に命尽きます』
まだ半年あるが、別に病気を患ってはいない。
って事は事故でもあるのか?
「くそっ!何なんだよ!」
気味は悪いが、こんな物を信用する訳がない。
ごみ箱に破り棄て忘れる事にした。
しかし、月日が経つに連れて段々と心が震えだした。
誕生日まで後二ヶ月、ちゃんと健康で何の問題もない。
仕事も上手くいってるし、人間関係も気にしている。
誕生日一ヶ月前…。
「そうだ、誕生日の数日前から有給休暇を取って家に居れば事故にもあわないだろう…」
俺はすぐに誕生日の二日前から有給を取った。
誕生日二日前。
「大丈夫だ、大丈夫だ…」
身体に異変はない。
単なる悪戯に違いない。
誕生日一日前。
「絶対、外には出ない…」
宅配便が来ても居留守を使った。
時間が長く永く感じる。
誕生日当日。
日付が変わっても体調に異変はない。
「やっぱり悪戯じゃないか…」
そう思った刹那…。
ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン…。
end