第263章 俺とあいつ⑰・一年の計は…
それは去年の年末の事だった。
「鬼火焚きって知ってる?」
「…またかよ
今度はどこの祭りだ?」
こいつがこういう言い方する場合はどこかに行く前触れだ。
「ほら、正月飾りとかを神社で焼く、どんど焼きってあるじゃん
九州地方では鬼火焚きって言うんだって!」
こいつは目を輝かせている。
「まさかと思うが、九州に行きたいのか?」
「…だって寒いんだもん
九州の方があったかそうじゃん」
俺は溜め息しか出て来ない。
「はぁ…お前なぁ…」
こうなるとこいつに何言っても聞かない。
年が明けて…。
「明けましておめでとう♪
今年もよろしくね♪」
一緒に初詣に行った。
「おめでとう
今年は迷惑掛けんなよ」
「何それ?
新年早々ダメ出しって…」
こいつは膨れっ面をしている。
「どうせ九州行く気だろ?」
「なんなら一緒に行く?」
「ばーろー、七日は仕事だ
お前みたいに呑気じゃいられないんだよ」
俺は苦笑いする。
「ちゃんとお土産買ってくるよ」
まぁ、こいつにしてみれば国内は隣町感覚だし、無言で行かなくなっただけマシだな。
『一年の計は元旦にあり』と言うが、今年もまたこいつに振り回される一年になるんだろうな…。
end