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千分の一話噺

第260章 名探偵、奮闘す


「今年も後十二時間で終わるか…」
俺は腕時計に目を落とし、頭を抱えた。
依頼の期限が今年いっぱい、来年になったら報酬は無しだ。


それは一週間前の事…。


久しぶりに調査依頼が来た。
「彼女を探してほしい!」
依頼してきた男はこの街の消防隊員だ。
彼女とは結婚の約束もしていたが二ヶ月前に連絡が取れなくなり、警察にも依頼したが行方は分からず仕舞い。
彼は来年早々に田舎に帰る為、年内に見付からなかったら諦めるつもりでいると…。

俺は顔見知りの刑事に彼女の情報を聞いたが、事件性はないので失踪者として扱っているとの事。
腹は立つが、警察としては当然な対処だ。
彼女の周辺を調べても行方をくらます理由が見付からない。
そこで彼を調べてみた。
消防署内での聞き込みは実直で優秀な隊員だと言う。
近所の聞き込みでも何の問題も見えない。
「何が原因なんだ?」
考えられるとすれば、彼が田舎に帰る事だが、彼女はそれも友達に喜んで話していたらしい。

クリスマスにも連絡は無く時間だけが過ぎて行く。
「こりゃお手上げだな」
しかし、彼女が失踪する直前に調べていた物がある事が分かった。
「後十時間か…
間に合うか?」
俺は彼女がいる場所へ向かった。



「ごめんなさい…」
彼女は消え入りそうな声で彼に頭を下げた。
「君が帰ってきたなら…
お帰り!」
「…うん、ただいま!」
二人は抱き合って依頼は終了だ。
「…間に合ったな」
時間は二十三時、彼女の足には二ヶ月掛けて自分で作ったガラスの靴が輝いていた。


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