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千分の一話噺

第257章 移民姉ちゃん


これから年末、クリスマスシーズンともなれば、あちらこちらでイルミネーションが華盛りとなる。
しかし、ここはちょっと違う様だ。


“限界集落”


若者は都会に出て行き、過疎化が進み、人口の半数以上が65歳以上の超高齢化した田舎町。
かつては地場産業もあり、それなりの人口があった。
しかしバブル崩壊後、企業は撤退し、学校は廃校となり、シャッター商店街にはコンビニすらない。

だが、ここの町内会はまだ諦めていなかった。
「なんとか若者を呼べる事しねえと駄目だべ!」
気合いを入れているのは町内会長の真壁銀次郎氏(85歳)だ。
「誰かなんか案はねぇだか!?」
真壁氏の言葉に手を挙げた若手がいた。
「あんのぅ…今頃は都会じゃイルミネーションちゅう電飾で町中を彩るちゅう事をやっとるんですが…」
若手…と言っても56歳になる山岸健太氏だ。
山岸氏は若い頃都会で働いていた経験があり、息子が都会で生活している。
「それじゃあ!!
そのイみんネーちゃんやるべ!」
真壁氏が叫んだ。
「(イルミネーションなんだけど)…ですが会長、電飾を揃える費用なんてありませんよ」
山岸氏は苦笑いだ。
「いんや、仏壇屋に蝋燭が余ってるべ
それを町中に並べるんじゃ」
「「おぉ~さすが会長だべ!」」
真壁氏の発案に町内会員は盛り上がった。
「しかし、蝋燭は危険では?」
山岸氏が慌てて指摘した。
「そんなら、うちの提灯使うべな」
提灯屋の里仲六郎氏が手を挙げた。
「決まっただ!
提灯イみんネーちゃんやるべ!」


町中に提灯を飾り付けた“提灯イルミネーション”はSNSで「幻想的で素晴らしい」と話題となり、少しずつだが町は活気を取り戻した。


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