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千分の一話噺

第253章 木枯らしの向こう【題名】


「やっと着いたな…」
「リーダー、ここが我々の先祖が暮らしていた場所ですか?」
「あぁ今やその面影もないがな…」
俺はバイザーを上げ直に荒野を見渡した。

時は5520年、地球は汚染と気候変動により、生物が住めない環境に陥っていた。
人間は死の星と化した地球を離れ火星へ移住し1000年以上が経っていた。

その火星政府は10年毎に地球へ調査チームを送り環境を調査していた。
俺は今回のチームリーダーに抜擢された。
「今はほとんどが砂漠化してるが、『地球は青かった』と言うくらい海が広がってたんだ
まだまだ回復する兆しもないな」
「リーダーの先祖は日本人ですよね
この辺りは日本列島があったはずですよ」
俺達が降り立ったのは東経136゜北緯35゜、今や海も緑もない砂漠と荒野が広がっている。
「日本は四季があり、自然が美しい島国だったらしい
今頃は秋の紅葉と、冬の始まりでもある木枯らしが吹いたと云う…」
「紅葉は知ってますが、木枯らしって何ですか?」
「日本特有の表現らしい
今頃に北からの強風があるとそれを木枯らしと呼んだそうだ」
その時、北からの突風が吹いた。
「何だ、この突風はっ!?」
「うわっ!これが木枯らしですか!?」
砂が舞い上がり視界は遮られた。
「リーダー!ここはっ!?」
視界が晴れるとそこは一面に木々が生い茂っていた。
「…何が…起きた!?」
その刹那、また突風が吹き荒れた。

「リーダー…さっきのは…?」
風が止むと周りは元の荒野だった。
「木枯らしが見せたこの星の記憶…?
…そんな訳ないな」
俺達は地質調査を再開した。


さっきのは木枯らしだったのか?それすら今の地球では分からない。
ただ風は吹くだけだった…。



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