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千分の一話噺

第245章 パリの絵描き


パリ郊外、年期の入ったアパートメント…。
俺は絵の勉強の為にここへ来た。簡素な部屋には、ろくな家具もなく、イーゼルとカンバスが壁に立て掛けてあるだけだ。

「さて、今日はどこへスケッチに行くかな?」

俺はキッチンで、バゲットに切れ目を入れ内側にバターを塗りチーズやハムを挟んでサンドウィッチを作った。
そのサンドウィッチを新聞で包んで、スケッチブックを一緒に持って外に出た。

郊外とは言えパリは到るところに絵の題材がある。今日はセーヌ河のほとりにある公園へ来た。以前は自動車専用道路だったと言う。
思い切った事をすると思った。パリの自動車専用道路と言えば東京なら首都高だ。それを潰すなんて日本では考えられない。そんな事を考えながら絵の題材を探した。

ベンチに腰掛けスケッチしながらサンドウィッチを頬張る。11月のパリの風は冷たい。
そこに洒落た老夫婦らしき二人がやってきた。
「絵描きさんかな?」
俺は、このなんとも絵になる二人にモデルを頼んだ。二人は快く引き受けてくれた。

『セーヌ河のほとりで佇む老夫婦』

スケッチを済ますと俺は二人にお礼を込めて、サンドウィッチを包んでいた新聞紙で折り鶴を折り渡した。フランス語が書かれた折り鶴と言うのもなかなか洒落ていると自画自賛する。老夫婦は笑顔で折り鶴を受け取り別れた。

芸術の都パリはどんな場面も芸術に変えてしまう。



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