第243章 名探偵と紅葉
「おい、名探偵
今度の連休、空けときな」
オーナーが突然やって来て、それだけ言うと帰っていった。
「なっ…なんだ?、今のは…?」
いつもながら強引と言うか、勝手と言うか…。
その答えは、その日の夕方に分かった。
「探偵さん、引き受けてくれてありがとう♪」
佳奈ちゃんが学校帰りに駆け込んできた。
「ん?何の事だ?」
俺は首を捻った。
「今度の連休に紅葉狩りに連れてってくれるんでしょ?」
「あっ…この事か…」
(あのババア、ちゃんと最後まで言ってけよな)
俺は苦笑いで頷いた。
「良かった~
お父さんが急な仕事で行けなくなちゃったの…」
「そっかぁ…
でも俺なんかで大丈夫なのか?」
「うん、おばさんも一緒に来てくれるからお母さんも安心してお願いしますって!」
俺をダシに使って自分が楽しむつもりでいやがる。
(あのババア、報酬はきっちり請求してやる)
俺は拳を握り締めた。
紅葉狩り当日。
レンタカーに、俺と佳奈ちゃんと佳奈ちゃんのお母さんとオーナーが乗り込む。
「いつも佳奈がお世話になってます」
佳奈ちゃんのお母さんが俺とオーナーに挨拶をした。
「良いんだよ、こいつはいつも暇なんだから」
オーナーの返しにお母さんは苦笑いしていた。
行き先は某県紅葉村。
山間の小さな村は、周りの山々はもちろん、村の中も朱や橙の紅葉で染まっていた。
「へぇ、村の中にも紅葉が植わってるんだ」
「あっ探偵さん、展望台があるって!」
山に登らなくても紅葉が楽しめるが、佳奈ちゃんが展望台に登ると言い出した。
「あたしゃ旅館で温泉に浸かってるから…」
「私も登るのはちょっと…」
オーナーとお母さんは旅館に直行してしまった。
展望台へは、道は整備されてるとは言え小一時間の登りで俺はへとへとだ。
「うわぁ~凄く綺麗♪
探偵さん、来て良かったね」
見渡す限りの紅葉と佳奈ちゃんの笑顔なら、登りの報酬には十分だな。
たまにはこんな休みも悪くない。
end