第242章 歳の差夫婦⑪・お義父さん
我が家の庭には金木犀がある。
旦那のお父さん(義父)が金木犀の香りが大好きで実家の庭にも植えてある。
「明日の休みに親父が来るから、日本酒買いに行くよ」
そう、お義父さんは大の日本酒党、しかも結構高いお酒が好きなのよね。
「ねぇ、ちょっと安いのにしない?」
「ダメだよ
親父はあれで鼻が利くんだから…
もう、だいぶ前の話しだけど、本当に違いが分かるのか利き酒した事があるんだ」
それは旦那とお義母さんが、高いお酒の瓶に安いお酒を入れて試したらしい。
それをお義父さんは呑まずに香りだけで言い当てたそうだ。
「凄い…香りだけで?
私なんか呑んでも分からないのに…」
「普通は分からないよ
親父が異常なんだ」
そんな話しをしながら、旦那が日本酒を選び、私はお義母さんと呑むワインを選んだ。
「金木犀、咲いただろ?」
お義父さんの第一声だ。
だから、真っ先に庭に案内した。
「良い香りだ!
よし、花見酒にしよう」
これがお義父さんの楽しみだから仕方ないわね。
「親父、これ何だか分かるか?」
旦那が昨日買った日本酒を瓶を見せずに出した。
「試す気か?」
お義父さんはぐい呑みに注がれたお酒を嗅いだ。
「…ほう…良い酒だな
…福井の黒龍か」
「凄い!本当に香りだけで言い当てた」
私は驚いて声を上げてしまった。
「あの人の特技みたいなもの…
一度嗅いだお酒と金木犀の香りは間違えないのよ」
お義母さんは笑って言った。
さすがは旦那様のお父さんだ。
end