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千分の一話噺

第240章 鰯?


空を見上げた誠が呟いた。
「おっ、鱗雲だ」
祐司と光宏も釣られて見上げた。
「あれは鰯雲だ」
「鯖雲じゃん?」
馬鹿野郎が三人集まったところで、文殊の知恵とはならず、結局は結論が出なかった。


『秋の青空に小さな白い雲の群れは巻積雲(けんせきうん)である
見た目から通称として、鱗雲や鰯雲や鯖雲と呼ばれる』


雑学好きな誠がスマホで調べた。
「なんだよ…、どれも一緒だってよ」
スマホの画面を見せて苦笑いだ。
「…でも、この面は鰯雲だ」
祐司は所謂ゲーマーで頑固な所がある、。
「どっちだって良いじゃん
雲は時間と共に形が変わるんだから…」
光宏は『無駄なイケメン』と呼ばれ、見た目は良いがいい加減な性格をしていた。


三人は県内屈指の馬鹿な高校で出会った。
成績的には落ちこぼれの集まりだが、ほとんどの生徒はそんな事は気にしていない。
今が楽しければそれで良いと言う将来性真っ暗な奴らばかりだ。


「…けどこの雲、何か俺達みたいじゃん」
「「…どこが?」」
光宏の言葉に二人がハモった。
「空を自由に泳いでる感じがさ」
光宏は手を大きく広げて言った。
「はぁ…お前は自由を履き違えてるよ」
誠は少し呆れていた。
「それに俺達は鰯みたいに同じ方向は向いてねぇ」
祐司は首を振った。

「だからあれは鱗雲だ!」
「だからあれは鯖雲じゃん!」


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