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千分の一話噺

第239章 天女伝説


この神社には樹齢八百年とも云われる御神木の大銀杏がある。
見事な黄金色に紅葉する銀杏は、神社よりも古くからあり、言い伝えにある『天女伝説』の舞台になった銀杏である。



「へぇ~確かに綺麗な黄金色ね
でも、私には敵わないわ」
ずいぶんと自信過剰な天女が舞い降りた。
そこに若い村人がやって来た。
「あんた見掛けない服着てるが御公家様か?」
「私は天界より舞い降りし者、地上の者が気安く話し掛けるとは無礼だぞ」
村人は首を傾げた。
「天界だ?何言ってんだ?
道に迷ったなら案内するぜ」
「…御主、私を誰だと思っておる?」
(天界の者を恐れないとは、侮れないな)
天女はこの村人に興味を持った。
「この銀杏を見に来て、道に迷った御公家様だろ?
俺の村じゃ何も出来ないから、町まで送るよ」
「道案内には及ばないわ
それより、この銀杏と私どっちが綺麗?」
村人は更に首を傾げた。
「高貴な人の考えは分からんな…
人と木を比べるなんて出来るかよ
あんたは別嬪さんだ
けど、この銀杏も綺麗だ」
村人は正直に答えた
「…うふふっ
貴方、面白いわ
明日もここに来て下さいね」
そう言うと天女はふわりと空へ飛んで行った。
「とっ…飛んだぁ!?」
村人は腰を抜かし、その場に尻餅を突いた。

それから毎日の様に天女と村人は銀杏の下で会う様になった。
お互い引かれ合い、愛し合ったが、いつしか村人は年老いていった。
「貴女はいつまでも若くて別嬪さんだ
俺は年老いてしまい、もうここには来れないよ…」
「…これをあげる」
天女はこの銀杏の葉で作った黄金色の葉衣を村人に着せた。
すると村人は見る見る若返り、天女と共に天へと飛んで行ったそうだ。



この神社には銀杏の葉を模った縁結びのお守りがあります。
一つ三百円。
お土産にどうぞ。



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