第236章 俺とあいつ⑯・チョコレートコスモス
「チョコレートコスモスって知ってる?」
また、いつものやつか…。
こいつの悪い癖だな。
「チョコレートで出来たコスモスか?」
俺はおざなりに答える。
「それはそれで美味しそうだけど…ブー♪
チョコレートみたいな茶褐色した秋桜だよ
香りがチョコレートっぽいからチョコレートコスモスって名付けられたんだって」
こう言う事を言い出した後は必ず…。
「はい、君にプレゼント♪」
「…へ?…プレゼント?」
差し出された小さな鉢植え。
いつもなら「探しに行こう」とか言うのに…。
「ど…、どうした?熱でもあるんじゃないのか?」
動揺を隠しきれない。
「やだなぁ~
君にはいつも心配かけてるからそのお礼だよ」
満面の笑顔で渡されたチョコレートコスモスは、確かに甘い香りがした。
しかし、こいつが何も無しにプレゼントなんて考えられん。
「後ね…」
そら来た、やっぱり何かあるな。
「これもあげる♪」
洒落た紙袋を差し出した。
「な、なんだぁ?やっぱりお前、熱あるだろ!?」
いつもと展開が違う。
これは夢か?幻か?
そうか、白昼夢ってやつか?
「どうしたの?
君こそ熱あるんじゃない?
とにかく開けて見てよ」
俺は混乱したまま紙袋を開けた。
中には更に小袋がいくつも入っていた。
「これは…
秋桜の種?」
小袋は色とりどりの秋桜の種だった。
「来年になっちゃうけど、うちの庭に秋桜咲かせたいから、よろしく♪」
「一年も先の話し持ってくんな!」
「だって、その花見付けたらうちにも咲かせたいなって…」
そう言ってチョコレートコスモスを指差した。
どうやらこの花は本当に俺へのプレゼントの様だ。
「…覚えてたらな」
「やった~♪」
だから、その笑顔は止めろって…。
end