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千分の一話噺

第233章 夕陽


放課後の図書室、生徒の数は疎ら。
図書委員の私は、週一回は当番で最後までここにいる。
もちろん当番でなくても読書で最後までいる事も多い。

「ねぇ知っている?」
不意に声を掛けられた。
振り向くと見た事のない子がいた。
私が首を傾げると、
「この図書室って出るらしいよ」
と幽霊の真似をした。
私は目を丸くした。
「…えっ?
そんな話し聞いた事ないわよ」
毎日図書室に来ている私がそんな噂があれば知らないはずがない。
「でしょ、今思い付いたんだもん」
その子は笑って答えた。

「…あなた誰?」
制服は着てるし、歳も同じくらい。
「私はこの図書室が好きなの…
だから、あなたが毎日来てるの知っているよ」
私の質問には答えなかった。
でも、その笑顔になんか安心していた。

学校の話し、ここの話し、本の話し…。
楽しい時間は過ぎて行き、日暮れ時になった。
「…この時期のここから見る夕陽が綺麗なんだ」
そう言って西の窓辺に立った。
夕陽を背にしたその子は、まるで天使か妖精の様に輝いて見えた。
「…綺麗」
私は他に言葉が見つからなかった。
「明日も来てくれる?」
私が頷くとその子は光りに溶ける様に消えてしまった。

「………えっ!?」
私は図書室を見回した。
その子の姿はどこにも見えない。
「…夢?」
陽射しは西に傾いている。
私は明日が楽しみになった。



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