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千分の一話噺

第223章 歳の差夫婦⑨・かげろう


蜉蝣…。
その成虫は一日足らずで命を終える。
儚いものの代表と言われるのはその為だ。



「蜉蝣って儚いから綺麗に見えるのかな?」
旦那と買い物帰りに川辺を散歩していたら、透き通る羽根を羽ばたかせゆらゆらと飛ぶ蜉蝣を見付けた。
「儚いと言っても一年くらいは幼虫で生きてるからね」
「へぇ~そうなんだ
じゃあ、あまり儚くないないね」
私は苦笑いで答えた。
「成虫になると口が無くなって食べれないから早死にするらしいよ」
「え~っ!食べれないなんて信じられない
なんで成虫になるんだろう?」
「成虫にならないと子孫が残せないからだろうね」
今度は旦那が苦笑いだ。

「あっ、今日は外食にしない?」
「えっ?もう買い物したじゃないか」
「新しいレストランが出来たのを思い出したのよ」
私達は一旦家に帰ってから、また出掛ける事にした。

『リストランテ陽炎』

最近、駅の近くに出来たイタリア料理店。
旦那は店の前で呟いた。
「ふ~ん、なるほどね…
ここってリーズナブルなイタリアワインが沢山あるってタウン誌に載ってたよね」
「えっ…そう?
ほら、かげろうって名前で思い出しただけよ」
私は笑って誤魔化す。
さすが旦那様、私の目的はすでにお見通しの様だ。


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