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千分の一話噺

第222章 先輩


「学生はもう夏休みか…」
先輩がぼそっと呟いた。
「会社のお盆休みはまだ先ですよ」
「だよなぁ…」
先輩はがっくりと肩を落とした。

猛暑日続きの中、営業回りをするサラリーマンから見れば、この時期一ヶ月以上も休める学生は羨ましい限りだ。
まぁ学生には学生なりの苦労はあるが、社会人それとは比べものにならない。

「ちくしょう、学生に戻って夏休みしてぇぜ…」
「愚痴ってないで、次のお得意様に行きましょ!」
「…このくそ暑いのに、お前は元気だねぇ…」
「一応、学生時代は運動部でしたから…
でも、元気だけが取り柄みたいに言わないで下さいよ」
「…そんな風には思ってねぇよ
仕事もある程度覚えたし、そろそろ一人で営業しても大丈夫じゃねぇか?」

先輩の言葉に喜びも半分だった。
認められて嬉しい反面、先輩と営業周り出来ない寂しさと…。

「…私はまだまだ半人前です
先輩にもっと教えてもらわないと…」
「あん?本気にしたのか?
冗談に決まってるだろ
お前にはまだまだいろいろと叩き込んでやるから覚悟しとけ!」
「…はい!お願いします!」

本当に冗談だったのだろうか?
先輩は口は悪いけど、人の気持ちを汲んでくれる優しい人だ。
そんな先輩に私は…。


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