第221章 じいちゃん
「わしの蓄音機はどこじゃ?」
突然、じいちゃんが私の部屋に入って来た。
「じいちゃん、ここは私の部屋よ
蓄音機はじいちゃんの部屋にあるでしょ」
「そうか、ここじゃないのか…」
じいちゃんは残念そうに出て行った。
そう、うちのじいちゃんはちょっとボケが入ってる。
この前も新しく買ったビキニを着てたら、「なんじゃ!その破廉恥な格好は!」と怒られた。
でも、そんなじいちゃんもシャンとする時がある。
「久しぶりじゃのう
ほれ、早く行くぞ」
「じいちゃん、待ってよ
そんなに急がなくても乗れるから…」
じいちゃんの唯一の楽しみが誕生日にジェットコースターに乗る事。
この時だけは、一切ボケない。
「ほれ、早くせんか!」
動きまで早くなって付いていくのも大変。
「待ってってばぁ…」
昔からある遊園地は休日でも、差ほど混んでいない。
ジェットコースターも旧いタイプで、最新の様な刺激は無いがすぐに乗れる。
「はぁはぁ…なんとか間に合った
…じいちゃん、早過ぎるよ…」
「なんせ一年ぶりじゃからな
はよう動かんかのぅ」
じいちゃんはジェットコースターに乗り込むとまるで子供の様にはしゃいだ。
「じいちゃんは、なんでジェットコースターが好きなの?」
私はジェットコースターが動き出す間に聞いてみた。
「ばあさんと初めてデートした遊園地で、一番新しい乗り物がこれだったんじゃよ
それからは毎回これに乗ったんじゃ」
じいちゃんが満面笑みを浮かべたと同時にジェットコースターは動き出した。
end