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千分の一話噺

第217章 手違い


目覚めるとそこは私の知らない世界だった。


「…ここは…?」
辺りは淡い光りに満ちて、暖かく寒くもない。
足元は芝生に見えるが、ふかふかとした高級絨毯の様な踏み心地だ。

私は代わり映えしない景色を眺めながら宛てもなく歩いた。
「…何かしら?」
先に目をやると綿菓子の様なモノが列んでいる。
近づいてみると綿菓子はふわふわと浮いていた。
私がその光景に呆けていると後ろから声を掛けられた。
「おや?あなたは?」
私は声に振り向いた。
「…誰?」
「これは失礼いたしました
わたくし、ここの案内人を任されております、リヴィドと申します」
声の主、リヴィドは被っていたシルクハットを取り、深々と頭を下げた。
黒い燕尾服の様な服で如何にも紳士といった出で立ちをしている。
「…あの~ここはどこですか?」
私は恐る恐る聞いてみた。
「人間界では『あの世』と呼ばれている所です」
「…あの…世………って…」
私は言葉が出なかった。

思い返してみると私は自転車で買い物に行く途中、段差にタイヤを取られて…。
「…私…死んだんだ…」
がっくりとうなだれた。
「ですが、貴女はまだここに来るには早い様ですね」
リヴィドの言葉に顔を上げた。
「貴女の寿命はまだ60年程残っております
何かの手違いがあったようですね
すぐにお戻り下さい」
「も…戻るって…だって死んでるのに……どうやって?」
私は頭がパニクっていた。
「わたくしにお任せ下さい」
そう言うとリヴィドは指を鳴らした。




「いたたた…」
私はやっと起き上がった。
(あれ?ここは…)
私は周りを見回すと見慣れた景色だ。
「え?…リヴィドさん!?」
「気付かれましたね
わたくしはこれで失礼いたします」
リヴィドはまた指を鳴らすと、すっと消えてしまった。


さっきのは夢だったのかしら…



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