第210章 六月の花嫁
『低気圧が…
太平洋高気圧と…
梅雨前線が活発になるでしょう』
テレビの天気予報では梅雨真っ只中。
「あらぁ…やっぱり雨なんだ」
私はテレビを消して部屋を後にした。
外に出るともうしとしとと雨が落ちている。
ビニール傘を手に駅へと急いだ。
「まあ梅雨だもんね…当たり前か…」
独り言が口をつく。
ふと、人は何で諦めるんだろうか思った。
上手くいく人生を送れる人なんて極一部で、大半の人は上手くいかない事の方が多い。
そんな事が分かっているから諦めてしまうのは当たり前よね。
それでも人は努力したり、違う道を探したりして上手くいくように考える。
自然と口角が上がるのが分かった。
「うふっ、雨の時の準備もしてるし楽しみだわ」
駅へ向かう途中で、淡いピンクの紫陽花が目に留まる。
『雨に紫陽花』とはよく言ったものだ。
雨粒のドレスを纏ってるように見えた。
『本日はお足元の悪い中…』
晴れたら外で行うはずの式は屋内に変更となった。
「スタートがこれじゃあ、先が思いやられるよ…」
彼がぼやいた。
「雨降って地固まるって言うじゃない!」
落ち込む彼の尻を叩いてやった。
end