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千分の一話噺

第209章 六月の花婿


『低気圧が…
太平洋高気圧と…
梅雨前線が活発になるでしょう』

テレビの天気予報では梅雨真っ只中。
「ちっ…こんな日に限って…」
俺はテレビを消して部屋を後にした。

外に出るともうしとしとと雨が落ちている。
ビニール傘を手に駅へと急いだ。
「この時期だから雨は仕方ないか…」
独り言が口をつく。

ふと、人は何で思い通りにいかないとイライラするんだろうと思った。
思い通りの人生を送れた人なんて極一部で、大半の人は思い通りにいかない事の方が多い。
そんな事は分かっているのに、イラッとするのは人間が完璧な生き物じゃない証拠なのだ。
完璧じゃない人間が完璧を求めるなんて愚かとしか言いようがない。
自嘲するように口角が上がるのが分かった。
「ふっ、焦っても上手くいかないな…」
急ぎ足を緩めると、淡いブルーの紫陽花が目に留まる。
『雨に紫陽花』とはよく言ったものだ。
ささくれ立った心が和む。



『本日はお足元の悪い中…』
晴れたら外で行うはずの式は屋内に変更となった。
「スタートがこれじゃあ、先が思いやられるよ…」
俺がぼやいた。
「雨降って地固まるって言うじゃない!」
どうやら俺は尻に敷かれるようだ。



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