第208章 運動会
立春から数えて八十八夜。
ちょっと前なら『茶摘み』の歌詞にもあるような初夏手前みたいな陽気だった。
しかし今はもう、晴れればほぼ夏だろうと言う暑さ。
そんな最中、うちの会社では『運動会』が開催される。
スポーツ用品の製造メーカーとはいえ今時珍しい会社だ。
初代社長の『運動しない社員は不要』という教えを頑なに守っている。
現代社会ではパワハラで訴えられかねないが、入社面接時にはっきりと伝えられるので納得している社員しかいない。
だから会社全体が体育会系のノリである。
以前は野球部や陸上部があり、全国でもそれなりの成績を残していた。
社員食堂のメニューはプロ選手向けの栄養管理がなされている。
春は筍料理が多い。
筍は意外と高タンパク低カロリーで疲労回復する成分なども含まれており、会社の裏にある竹林で採れるのだ。
更に社内にはジムが設置されていて、残業終わりでもトレーニングしている社員ばかりだ。
もちろん社内運動会だからと手を抜く社員などいない。
逆にスポ恨魂に火を点ける。
以前は秋に行っていたが、全力を出し切り運動会の後は数日欠勤者ばかり…。
そこで連休前の五月二日に行うようになった。
今年も八十八夜がやって来た。
うちの会社は真夏以上に熱い!
end