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千分の一話噺

第203章 別れ…


「私…ずっと悩んでた…
もう、貴方とは付き合えないわ
…さようなら」
彼女から突然に告げられた別れ。
それは余りに突然で、俺はベンチに腰を落とし、ただ遠ざかる彼女の後ろ姿を茫然と眺めるだけだった。

彼女が去ってからどれくらい時が経っただろうか。
辺りはすっかり暗くなり人影も疎らになっていた。
(ここにいても彼女はもう戻らない…)
重い腰を浮かせ、重い足を引きずる様にあてもなく街をさ迷い歩く。
(何で気付かなかった…
俺はどうしようもない馬鹿野郎だ…
彼女の事を何も考えてなかった
あんなに悩んでたなんて…
…知らなかった)
乱れた思いはいくら歩いても整理は着かず、ただ自分の不甲斐無さを嘆くしかなかった。

そんな時、通りすがりの庭先に一輪の牡丹の花が見えた。
回りの花はまだ蕾で、たった一輪だけが咲いていた。
そこに一筋の風が走った。
牡丹の花びらは一枚、また一枚と崩れる様に散っていく。
まるで今の自分の様に見えた。


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