• テキストサイズ

千分の一話噺

第198章 名探偵はいつも腹ぺこ


「ほら、探偵さん早く早く!」
俺はすっかり仲良くなった近所の佳奈ちゃんと愛犬コロに引っ張られ桜の咲く公園に連れてこられた。

桜の木の下にシートを敷いて事務所のオーナーのおばちゃんが重箱の弁当を並べて待っていた。
「よう名探偵、この前はご苦労だったね」

そう、先月はこのババァ…いやオーナーの無茶振りに市内中を走り回らされた。
記憶を探せなんてどだい無理だろ。

「ねぇ探偵さん、この前の記憶喪失の人ってどうなったの?」
佳奈ちゃんが卵焼きを食べながら聞いてきた。
「あぁ、この街には子供の頃にいたようだが、事故で家族を亡くし、自分もその事故のショックから記憶を閉ざしてしまったそうだ
まぁ墓を探し出して、墓参りしたら全部思い出したよ」
俺は重箱の弁当に手を出そうとした。
その刹那、突然桜吹雪が巻き起こった。
「うわっ何だ!?」
桜吹雪の中から奴が現れた。
「久しぶりですね、名探偵!」
「鼠かっ!てめぇ何しに来やがった!」
そこには黒装束の怪盗ラットキッド五世が立っていた。
「ほぉ、これはなかなか良い弁当ですね
今日はこれを貰っていきますよ」
また桜吹雪が巻き起こった。
「こら待てっ!俺はまだ食べてないんだぞ!」
「はははっ、代わりこれを差し上げますよ」
鼠は重箱の弁当を綺麗に持ち去り、代わりにカツ丼が置かれていた。

「…今のは何だい?」
「探偵さん、あれが怪盗さん?」
「ク~ン…」
オーナーも佳奈ちゃんもコロも呆然としていた。

俺は奴が置いていったカツ丼を食いながら心に誓った。
(食い物の恨みは絶対晴らす!)



end
/ 1578ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp