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千分の一話噺

第197章 俺とあいつ⑫・SOS


『SOS、SOS!
すぐに来て~(ToT)』

せっかくの休日なのにあいつからメールが…。
どうせろくでもない事だと思ったが、ほっとくと更にめんどくさい事になるから『すぐ行く』と返信し、あいつんちに向かった。

自転車で向かう途中の桜並木は花がすっかり散って新緑の葉桜が綺麗だ。
昔はあいつと一緒に自転車で通学していた道だ。

「しかし何なんだよ!SOSって!」
俺はぼやきながら自転車を漕いだ。
陽気の良さにあいつんちに着いた時には少し汗ばんでいた。

「あっ!こっちこっち!」
玄関先であいつが手招きしている。
「SOSってどうしたんだ!?」
「これ見てよ!」
指差す先には花壇があった。
そこには色とりどりのチューリップが咲いている。
「…綺麗なチューリップだな
…これがどうかしたのか?」
俺は率直な感想を言った。
「でしょ!
チューリップの球根って、ちゃんと手入れすれば来年も花を咲かせるんだって…
だから手伝って!」
そう言って手を合わせてお願いしてきた。
「………はぁ…」
俺の予想(ろくでもない事)は大当りし、ため息以外何も言えなかった。

チューリップの球根を来年咲かせるには、ちょっと勿体ないが咲いてる内に花を切り落とした方が球根に栄養が貯まるそうだ。

せっかくの休日にチューリップの刈り取りをやらされるとは思わなかったが、本当の意味での『SOS』じゃなくて良かったと内心胸を撫で下ろした。



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