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千分の一話噺

第193章 新居


「今日から改めてよろしくな」
俺達は今日、婚姻届を提出した。
三月三日雛祭り、彼女の誕生日でもある。
彼女の名前『桃華』も雛祭り(桃の節句)に因んでだという。
「うん…、じゃあ片付け始めよう」
新居に引っ越す為の片付け、再来週にはここを引き払う事になっている。
「新居は隣に公園があるだろ?
昨日見に行ったら、梅の花が咲きそうだったよ」
新居はここから自転車で行ける距離だ。
「梅なら花粉症のあなたでも平気ね
部屋から見える場所だっけ?」
「部屋からは見えないと思うけど、バルコニーに出れば見えるよ
引っ越す頃には見頃じゃないか」
そんな話しをしながら、俺達は忙しなく手を動かした。


引っ越し当日。


「この部屋で最後の記念撮影しようよ」
桃華の提案で何もなくなった部屋と二人で並んだ写真をスマホで撮った。

この部屋は俺達を繋いだ記憶でもある。

俺がこの部屋を借りる時の不動産屋の担当が桃華だった。
俺の一目惚れだ。
部屋の事はそっちのけで桃華にアタックし、部屋の契約と同時に彼女になってくれた。

「そういえば今日ってホワイトデーだったな
引っ越しでいっぱいだったから何も用意してないや」
俺はすまなそうに頭を掻いた。
「こんなに素敵な部屋を用意してくれたから許す」
バルコニーから梅の花を見ながら微笑む桃華の笑顔は出会った頃と変わらなかった。



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